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設備稼働率にこだわらない

 

先日、地元四日市市の株式会社伊藤製作所 伊藤澄夫社長、浜松市の沢根スプリング株式会社 沢根孝佳社長のお話を伺う機会がありました。

 

伊藤製作所様は、自動車部品を中心とした順送プレス金型製作とプレス加工で独自の技術を積み重ね、フィリピン、インドネシアにも進出して事業を拡大しておられる、地元を代表する製造業。また、沢根スプリング様はバネ製品の試作開発や特注品の少量生産に特徴を持ち、バネ製品のネット販売も手がけておられます。

 

また、両社長ともに社員の方々をとても大切にしておられる点が共通しており、社員を家族と同様に考えコミュニケーションする姿勢を徹底しておられます。伊藤社長は、海外の現地社員の育成にも力を入れて現地スタッフだけで海外工場を運営できるようにしていたり、沢根社長は社員が自らの力で「考え」「作り」「売る」ことを徹底し、ものづくりだけでなく来客時の工場案内や会社説明等も社員にできる限り任せるなど社員第一の運営を進めておられ、「日本で一番大切にしたい会社」として表彰されたりもしています。

 

このような「人を生かす経営」という面でまさにお手本となる取り組みを実践されている両社なのですが、お話を伺う中でものづくりそのものの部分でも共通する考え方があることがわかりました。

それは「設備の稼働率にこだわらない」ということです。

 

ものづくりを管理する立場の者であれば、稼働率というのはとても重要な管理指標で、稼働率を上げてこそ効率的な生産であると思いがちなのですが、伊藤社長と沢根社長はそれぞれ違ったアプローチではありますが「稼働率にこだわる必要はない」ことをお話しておられました。

 

伊藤社長の考え方は、自社で製作した高精度なプレス金型の能力を最大限に発揮させるために、一度プレス機に取り付けた金型はずっとそのままにし、別の金型との交換作業(いわゆる段取り)はしない、場合によってはプレス金型製作時にプレス機も1台導入して専用機化している。プレス加工の現場では日々の生産計画によって稼働するプレス機とそうでないプレス機が出てくるものの、作業者は金型交換(段取り)に追われることもなく、多台持ちで加工状況の管理ができるというメリットがあり、管理状態としては効率化していることになるようです。

 

沢根社長の考え方は、試作や特殊品の少量加工に特化することで、設備の稼働率は低くてもより高い付加価値を生み出そうというもので、弊社の場合も多品種少量生産という特徴から、理解しやすい考え方と感じました。

 

設備稼働率が良いにこしたことはないと思いますが、自社のものづくりの特徴と照らしあわせて、生産管理の重点をどこに置くかを考えることが大切だと思います。
弊社の場合は、一部の機械で加工時間、稼働率を管理していますが、全体としては単純に設備を動かした稼働率ではなく、生産手配から製造、検査、出荷までの生産件数と時間あたりの生産額(いちおう付加価値と捉えています)を重視した管理指標をもうけています。ただこれも本当に妥当な管理なのか、弊社のものづくりで一番付加価値がつけられる生産形態はどのようなものなのか、改めて考えてみる必要があるなと感じ、新たな考え方を学ぶ貴重なお話を伺うことができました。